月曜日, 12月 02, 2019

研究倫理のこれから(松本)

心理科学研究会2019年秋研究集会(札幌)に参加し、フリーテーマセッション「研究倫理と心理科学研究のこれから」をコーディネートし、「子ども研究における倫理審査の課題とこれからに向けて」の表題で話題提供をしてきました。

心理学研究や保育・教育、子ども研究は、協力いただける人(participants)の存在なくては成り立たないものです。参加・協力いただける人の権利が守られ、適正な手続きで研究が行われているか、利益相反によって研究結果が歪められていないか等を検証するために、現在、関連学会や大学等の研究機関の多くでは研究倫理規定が定められ、所定の手続きに従って倫理審査が行われるようになっています。

研究とは、そもそも何のために、何を目指して行われるものでしょうか。
一義的に定めるのはもちろん難しいでしょう。とはいえそれが、社会のなかの私たち一人ひとりの尊厳、人類の希望や豊かさ、幸せを育み、達成していくことと深く関わっているのは間違いありません。
そう考えると、倫理的に研究が実践されるかを担保するための審査は、単にそれが規定に沿っているかを判断するものではなく、研究倫理に対する研究者の自律的な構えを引き出すことが目的になるはずです。そのためには、倫理規定そして審査は、各研究者が研究の自由と自律性を保障される中で、自ら研究の意味を、常に振り返り続ける過程を支えるものである必要があるでしょう。

研究に関わる全ての人が、自らの権利が守られていると感じることができているか。ときに形式的になりがちなこの種の手続きについて、これからも考え、さまざまな人と力を合わせて取り組んでいきたいと思います。きっかけを与えてくれた、国内外の研究者仲間に感謝です。ありがとうございました。



火曜日, 7月 09, 2019

玉野高校生と(松本)

岡山県立玉野高校の学生が大学を訪れ、「児童心理学」の授業に加わってくれました。
ちょうど、内容は思春期の発達について。この内容を思春期まっただ中の当事者に話をするのはこちらも初めての経験で、どうなることやら!?と思っていましたが、いざ実践してみると、高校生のみなさんは魅力的なコメントをたくさん返してくれて、大学生にとっても、私にとっても有意義な時間となりました。

今日、高校生のみなさんと一緒に考えたのは、「『中学生だったあのころにはこだわっていた・気になっていた・夢中になっていたけれど、今ではそうでもないこと』って何だろう?」という問いを手かがりに、思春期前期の自分らしさを支えるために何ができるか?を探ること。
「俺、ぜんぜん課題やってねえ!」とあえてみんなの前で口にしたくなる中学生、合唱コンクールに対するクラスメート、中でも男女の熱意の差にいらっとしてしまう中学生、靴下をどう折るかなど、いかに学校の規則を破るかに夢中になってしまう中学生には、大人との関係、そしてその対極にある子どもの世界の中で揺れ動き、葛藤しているという共通点があるように思います。
大人や友だちとの関係の中で意識され、紡ぎ出される自分らしさから、「他者とは異なる自分」という意識を介し、これまでの自分や他のみんなと、違うけど同じ、同じだけど違う自分らしさへ。
「似ている」けれど「独自」という、一見矛盾した自分らしさを肯定的に語る力は、突然に形成されるのではなく、少なくとも発達的には、「○○ではない自分」という否定的な語りを経由して初めて現れるものだと理解できます。

発達とは希望を育むことである、とは、故・神田英雄先生が、亡くなられる直前にたびたび口にされていた言葉です。
それぞれの子どもたちが発達過程の中でおのおの巡り会うであろう、一見否定的に見える揺れ動きや葛藤の場と時間が、中学生や高校生の時期に十分に保障されることが、その後の人生を希望をもって歩んでいく力となるのではないかと感じました。

高校生のみなさん、これまでの学びを更に深め、みなさん自身の、そして私たちの社会のこれからにつなげていく機会が豊富に準備されているのが、大学という場です。
学ぶこと、その先に新たな価値を生み出すことに魅力を感じるみなさんは、ぜひ大学での学びにチャレンジしてほしいと願っています。待っています!


月曜日, 6月 24, 2019

ゼミ; 28th May 2019(さとみ)

こんにちは。
先日の15分せんせいの報告をさせていただきます。

今回の15分せんせいはさえ先生でした!
絵の具をたっぷりのせた画用紙をジップロックの中に入れ、袋の上から絵の具の感触や色が混ざっていく様子を楽しもうという活動でした。

手が汚れることが嫌な子どもも抵抗なく遊べるように、ジップロックの上から絵の具を触るという工夫をしてくれていました。
画用紙の上に広げた絵の具を触りながら混ぜていってみると、色が重ならないようにのせた場合はなかなか上手く混ざりませんでした。そこで、小さな氷をジップロックの中に入れてもう一度混ぜてみると、氷が溶けて絵の具が混ざりやすくなり氷の冷たさも感じられて面白かったです。今回は赤・青・黄の3色を使ったのですが、それぞれの絵の具の量によって混ざった時の色も違っていて、それぞれ個性の出る作品になりました。

その後みんなで話し合ってみて、より大きな紙や袋を使う、絵の具を変えてみる、アイスクレヨンを使うなどの案も出ました。たくさん工夫のできそうな活動で、自分も実際にやってみたいなと思いました!

さえ先生ありがとう!!

水曜日, 1月 02, 2019

A Happy New Year 2019(松本)

2019年になりました。あけましておめでとうございます。
日本に続いて、こちらも元旦を迎えました。

ここCanterburyでの生活も、あっという間に残り3ヶ月。
大晦日。今とこれからのいろいろを家族と話す中で、これまでの道のりを長めに振り返る機会がありました。

大学院でもばだばたとがいていた20年前、保育という世界があることを知りました。
短大で笑っていた15年前、保育の研究と教育、そして学生だったみんなと出会いました。
ふたりぐらしから数年を経た10年前、子どもたちとの生活が始まりました。
新しい街そして職場に少しずつ慣れはじめた5年前、国際的に研究する準備を始めました。
そして今、ここまで来て、これからの5年、10年、15年でしたいこと、できそうなことが見えてきたのが、心からありがたいことだと思います。

もちろん、スポンジのような吸収力の子どもたちを前に、次から次へと言葉を忘れていく困った自分を振り返れば、もう5年早く来られれば語学も少しはましだったかも!等々感じることはしょっちゅうです。
とはいえ今、Primary schoolで観察研究を進められているのは、子どもたちを介してこちらの学校でのふだんの言葉づかいや表現、文献では見えない背景を学べたおかげ。考えてみれば子どもたちも、今、この時期にこちらで学べる機会を得られたからこそ、きっと今後につながる経験ができている……。

そう考えると、個々の出来事を振り返って、そのあれこれを論じるのは難しい。
それぞれがこれまで、一歩ずつ歩んできた必然として今の自分たちがあり、それはきっとこれからも同じだろうな、と感じました。

今年もまた、小さな、そして大きなFamilyで支え合いながら、一歩ずつ積み重ねて届くところまで歩んでいきたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
みなさまの一年に幸がありますように。

Our very best wishes for a happy new year!