水曜日, 7月 10, 2013

保育所と小学校―「ハレ」の場としての連携活動(松本)

 先日、丸亀市立富熊保育所にて、小学校と保育所の連携交流活動を見せていただく機会がありました。
 隣の富熊小学校から訪れた2年生と5歳児が一緒に取り組んだのは、夏野菜を使ったピザクッキング。夏野菜は、キュウリ、なすび、トマト、ピーマンなど。保育所と小学校それぞれで子どもたちが育て、前日までに収穫しておいたものです。

 みんなで歌を歌い、先生から作る手順の説明を受けた後、5歳児と2年生の混合グループそれぞれでさっそくクッキング開始。ピザシートへソースを塗り、野菜やチーズのトッピングをします。口では「なすび、食べれんのや~」等々言う子がちらほら見られながらも、活動自体に後ろ向きな子どもは一人として見あたりません。

 トッピングが終わり、ピザを焼いている間は「そうめんにゅうめんひやそうめん」ほかの触れ合い歌遊びをして待ちます。5歳児はともかく、気持ちは少し照れながらも、体は遊びにぐっと引き込まれていくところが2年生の可愛いところです。

 いよいよ、ピザが焼けました。しかしそれを切り分ける段で一苦労。4~5人ほどのグループでみんなが納得するように分けるにはどうしたらよいか。紙上で割り算すれば、同じ大きさで簡単に割れる。でも、実際には同じように分けることはとても難しい……。なかなか切れないピザカッターを手に苦闘する子どもたちからは、たくさんの小さな物語が生まれました。
 そうだ! 自分に割り当てられた大きいピースをさらに2つに分ければ、2回食べられる楽しみがある!……うんうん、そうだよね。そのアイデアをもらった5歳児、さっそく真似をしていました。

 さて、いよいよ一番楽しみだった「いただきます」へ。一瞬の静けさの中で、無心になって食べている姿が何よりおいしかった手応えを物語っています。私も少し分けてもらいましたが、歯ごたえと野菜の甘みがすばらしい! そして、作っていたときにはちらほら聞こえたはずの「なすび苦手」「トマトきらい」の声はどこへやら……残食はもちろん皆無でした。

 子どもたちが感想を述べ、片付けをして解散。双方の子どもたちのほころんだ表情と、小学校へ戻るお姉さん・お兄さんを見送ろうと、自然と足が動く5歳児の様子からは、今日の活動が子どもたちにどのように根付いたか、その手応えが自ずと伝わってきました。
 子ども達はその後、今日の活動をどのように振り返り、自らに取り込んでいくのでしょうか。
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 仮に、知らない2人が「仲良くしなさい」と正面からただ求められたとします。そこでどうふるまうかは、私たち大人にとっても簡単ではないでしょう。いっぽう、五官が刺激される食を介した実践は、そこに参加する子どもたちの間に、前向きな姿勢をともにする経験を無意識のうちに可能にします。ことばを越えて直接子どもに働きかけることを可能にする、「食」のもつ力を改めて実感することができました。

 非日常の空間の中で、子どもたちが思わず前のめりになれる教材を選ぶこと。それを、時間的な自由度を一定程度担保したうえで実践すること。
 そのことは、普段はともに過ごすことのない子ども同士をつなぎ、日常の生活とは異なる、意外な姿を子ども達が見せてくれる一つのきっかけになりえるでしょう。

 「小学生が幼児に教え、幼児は就学後に困らないようにする」定型的な「連携」像を超えて、日常とは異なる「ハレ」の場面としての交流活動を通じ、大人の想定を上回る子どもの多様な姿を引き出す。
 それは、今後の日常における子どもの姿の変化の見通しを可能にするとともに、それに合わせてこれからの日常の学校生活・園生活等における、私たち大人が子どもへ働きかける際の新たな手がかりを見出すことへと結びつくはずです。

 「連携」の新たな可能性を示していただいた実践を、おいしく味わうことができました。ありがとうございます。
 今後の展開を、ますます楽しみにしております。