11/15/2016

ハッとする心の動きをつくり出す(小川綾花)


 失礼します。幼児教育コース3年小川綾花です。今回は、保育内容の指導法(人間関係)の授業で『ハッとする心の動きをつくり出す』という事例(松本博雄・第一そだち保育園2011『子どもとつくる0歳児保育:心も体も気持ちいい』ひとなる書房)を読み、考えたことについて書いていきたいと思います。

 この事例に出てくるかずまくん(1歳3か月)は、アンパンマンへのこだわりが強く、アンパンマンを見つけてはその世界に入り込んでしまう姿が見られました。保育者はアンパンマンの世界の外に興味が広がりにくいかずまくんに対して、「ハッとする心の動き」をつくり、かかわりを広げていくことにしました。かずまくんが興味を示すように、朝のあいさつをするときに動物のお面をかぶって登場したり、給食担当のかな先生に子どもたちの目の前でリンゴの皮むきをしてもらったりしました。

 この事例を読み、皆でかずまくんの興味が向く「アンパンマン」と「リンゴ」の違いについて考えました。アンパンマンとリンゴの違いとして、2つの考えが出ました。1つ目は、リンゴはかずまくんの好きなアンパンマンと同じ丸い形をしていますが、皮をむくことで色が、切ることで形も変化する、ということです。かずまくんの知っているいつものリンゴが、皮をむくことでいつもとちがうリンゴになりました。かずまくんにとってリンゴはそれだけでは興味の対象になっていなかったのかもしれません。しかし、皮をむくことで、自分の知らないリンゴが出てきたことに「ハッと」心が動いたのではないかと思います。これは、いつもとちがう体験が大切というだけではありません。いつもとちがう体験の裏には、いつもと同じ経験があるということです。いつもと同じことを繰り返しおこなうことで、いつもとちがう体験に「ハッと」心が動くのではないかと思います。そのため、いつもとちがう体験をつくり出すことだけでなく、「いつも同じ」を大切に毎日の保育をおこなっていく必要があると考えます。私が保育所実習で入らせて頂いた1歳児クラスでは、同じ絵本を何度も繰り返し読み聞かせしていました。みんなが好きな絵本だからこそ、何度も繰り返し読むことで、保育者や友だちと楽しい気持ちを共有しているのだと思います。また、その楽しい気持ちを保育者に共感したり、受け止めてもらうことで、いつもの絵本に対する期待が増していき、いつもの楽しさがつくられていくのではないかと考えます。

 2つ目は、リンゴは五感をいっぱいにつかって関わることができる、ということです。リンゴは目で見て、触れられるだけではありません。食べられるし、においをかいだり、食べるときに出る「シャリシャリ」という音も聴くことができます。これはアンパンマンにはできないことだと思います。目で見て、触れるだけではなく、からだと心をいっぱいにつかってかかわったからこそ、かずまくんにとって「ハッと」心が動いたのではないかと思います。
 
 また、ひとつのものの世界の外に興味が広がりにくいかずまくんは、他の子に比べて保育者や周りの友だちとの関わりも少ないように感じました。これは、自分の世界に閉じこもってしまうあまり、周りの友だちへの興味がまだ持てていないのではないかと思います。今回の事例でかずまくんの心が「ハッと」動いたときには、保育者や友だちの存在が近くにありました。心が動き、周りの世界に興味が向いたときに、保育者や友だちがいることで、今の気持ちを共感してもらったり、同じ気持ちを共有することで、ものやことだけではなく、ヒトへの興味もでてくるのではないかと思います。

 実践を読み、心をいっぱい動かす体験は1歳児にとってとても大切なことだと思いました。様々なもの、こと、ヒトへの興味や関心から、「うれしい」「たのしい」気持ちを保育者や友だちと共有することで、楽しいから「~したい」という思いを自由に出せることにもつながるのではないかと思います。しかし、心をいっぱい動かす体験をするためには、いつもと同じことを大切にしていく必要があると思います。いつもと同じだから得られる安心感があるからこそ、いつもとちがう体験をしたときに「ハッと」心が動くのだと思います。毎日の安定した生活を土台として、子どもたちの心が動くような体験を考えていくことが大切だと思いました。




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