木曜日, 6月 18, 2020

6/16 ゼミ『貧困と子どもの経験-子どもの視点から考える』(片岡)

 こんにちは。片岡です。前回に続き、松本伊智朗/小西祐馬/川田学=編『遊び・育ち・経験-子どもの世界を守る』2019, 明石書店, を読んでいます。今回は第一章、大澤真平「貧困とこどもの経験 -子どもの視点から考える」でした。

 担当のりさちゃんが文献を通して考えたのは、「子どもの貧困の見方」と「支援のあり方」について。
 「子どもの貧困の見方」:今の日本は子どもの生活は家庭とは切り離せない構造になっており、経済的余裕に加え、病気や介護など家庭によって抱えている問題もある。お金、時間、心etcの余裕がなくなると、子どもの可能性も奪われてしまうのではないか。(りさちゃんの図解がとっても分かりやすいので写真⇩もご覧ください!)



 「支援のあり方」:大人が、「いま、ここでの」子どもの世界や遊びを守ることが大切なのではないか。また、支援のあり方の具体例として「クリスマスにサンタさんからのプレゼントがない家庭もあるから、保育所等でサンタさんが出てくる絵本の読み聞かせをするべきではないのか?」という問題提起も。

 そこで、「貧困は何を失わせるのだろう?」という問いを手がかりに議論。
 貧困で失われるもの…友達との時間?余暇?進路を決めるときの選択肢?
 いやいや、問題は失われることではなく、隠さなれければいけないことでは??
 等々意見を出し合い、たどり着いたのは「自分や相手に期待する気持ち」ではないかと。人間は、貧困という状況に置かれると、そこに適応しようとする。いろいろな考えや希望を言っても叶わないことが続くと、だんだん諦めて言わなくなる。そのことは次第に人生全体に影響を及ぼし、相手や自分の将来に期待したりする気持ちを失わせてしまう。特に乳幼児期の子どもの場合、他の世界を知らずに適応し、人生の早い段階から、期待する気持ちを持てず、思いを言葉にせず、人生を送るようになるのではないだろうか。

 貧困、病気、障害・・・どのような状況に置かれている人間にとっても、生きていく上で「自分や相手に期待する気持ち」を持っていることは大きな力になる。それがあれば、自分を取り巻く困難も乗り越えることができるだろう。でも、困難を乗り越えることが、“諦めによる適応”であってはならない。“自分や相手に期待する気持ちを持ったうえでの選択”であれば、それは自分という崩れない土台を作ることになる。

 このことは、支援のあり方を考えていく上での重要なポイントでもある。先ほどのサンタさんの絵本の例で考えると、大切なのは“読まない”ことではなく、“その絵本を見ない権利が保障されているか”。隠すのではなく、違いや多様性をどう子どもに伝えるか、そこを考えることで支援のあり方が見えてくる。
 乳幼児に関わる者として、子どもの思いを丁寧にひろい、子どもにとって思いを出せる(=それはつまり思いに答えてくれると子どもが期待している)相手でありたい。そして、集団を相手にする中で、一斉に何かをさせることで知らず知らずのうちにある価値観を押し付けていないか振り返り、どの子どもにも遊びや話題に参加する/しない権利を保障しなければならない。

 議論を進めていくうちに、よく言われる(けれどなんだか漠然としている)“一人ひとりを大切に”の本質が見えてきたような気がします。実践に生きる議論となりました。

 「自分や相手に期待する気持ち」
 ・・・子どもだけでなく大人である私たちも、意識はしていないけれどいつもその気持ちに支えられて、毎日を過ごすことができているのだろうなぁと感じた時間でした。

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