木曜日, 9月 06, 2012

全国保育合研:1歳児保育分科会報告(松本)

 8月に開催された、第44回全国保育団体合同研究集会@兵庫の1歳児保育A分科会で世話人を務めた関係で、分科会のまとめを執筆しました。
 魅力的な実践報告のおかげで、充実した会になりました。雰囲気が少しでも伝わればと思い、以下に掲載します。
 報告集は、雑誌「ちいさいなかま」の臨時増刊号として、12月に刊行される予定です。

 来年は神奈川だそうです。(実は、私のふるさとでもあります。)
 保育に携わるみなさん、一緒に足を運んで、元気と前向きな気持ちをシェアしに行きましょう~!
 保育者も、保護者も、たくさんの方が参加している会です(今年は確か、述べ1万人超!)。



 【提案内容】
◆子ども理解をする為には大人の人間関係を築くこと―話すことから始める大切さ(埼玉・あかねの虹保育園:田中愛美さん・河内奈実子さん・新井敬子さん)
 当初は関係がぎこちなかった保育者間が「話すこと」を手がかりに気持ちを共有できたことによって、保護者・子どもとの関係も深まり、よい循環のもとで保育をつくれるようになった様子が見える実践であった。

◆1歳児クラスなりの主体性を考えて…(山形・とちの実保育園:横山史織さん)
 保育において大切にしたい子ども観が「主体性」という軸で明確にされ、「自分で決める」体験を豊かに重ねることを大切に、実践を通じてそれが具体化していく様子が紹介された。

◆イヤイヤと向き合って(群馬・おひさま倉賀野保育園:高橋宏美さん)
 成長を喜ぶがゆえの「できるようになってほしい」思いをもちつつ、「押しつける」のではない向き合い方を探る姿が、他の保育者との連携の様子も交えながら紹介された。

◆自己主張が強くなる1歳児の関わり(兵庫・ポッポ保育園:中島美愛さん)
 1歳児特有のトラブルや「イヤイヤ」に遊びづくりを通して向き合い、子どもの気持ちに共感することで豊かな保育を実現するさまがよく見える保育実践であった。


【討論の様子と今後に向けて】
 4本の実践を通じたキーワードとして「自己主張」と「共感」が挙げられる。これをふまえ、当日の議論は主に①保育者間が互いの思いを出し合うために大切にしていることは、②1歳児の「自己主張/主体性」をどのように理解し支えるか、の2点から進められた。

 0歳児までの大人との一体的関係から離れ始めた1歳児の姿の代表的な姿は、「イヤイヤ」に代表される自己主張であろう。この自己主張は、発達的な視点から捉えれば、表象を支えに自分なりの思いを持ち始めたゆえの行動と理解できる。自分の思いを抱き、葛藤しつつ相手に伝え、行動するという、0歳台とは質の異なる「主体性」の保障が課題となる時期だといえよう。

 いっぽうでこの姿は、それを支える相手による「主体的に動き始めた子ども」への共感的な理解があって初めて保障されるものであろう。大人の思うように子どもを動かし「できるようにする」のではなく、「思いを尊重された」手応えを子ども自身に残せる保育の手立てを考えるにあたっては、子どもの思いを探りつつ、遊びにおける楽しさを軸に共にそれをつくり出すという「共感」に加え、そのための土台となる保育者間、そして保育者―保護者間の「共感」が欠かせない。

 なかでも保育者間の連携を考えるうえでは、近年どの園でも非常勤職員が増えている現状をふまえることが必要となる。当日の議論からは、①単に園の保育方針を伝えるだけではなく“その人の思い”をまずは知ること、②当事者が受け身ではなく、保育について「語っていいんだ」と思える場をつくること、③当事者同士で気持ちがぶつかり過ぎるときは、第3者を立てることで相手の良さや立場を冷静に発見できる可能性がめばえること、の3点がまとめられた。

 4本の実践はどれも魅力的で、提案された課題も1歳児保育において誰もが出会いうるものであり、全体として実践を共感的に受けとめながら有意義な討論が展開できた。

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